『女性を落とす』と本気で思ってた俺が、本当に好きだった人に振られて気づいたこと

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一般企業勤務の妻が、地方公務員の夫(コテツ・37歳)の体験談を聞き取って代筆/編集/公開しています。

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「落とす」「やれる」「はめる」「100人切り」「掌握する」。

大学時代の俺は、情報商材の恋愛テクニックでこういう言葉を覚えて、何の違和感もなく使っていた。「いつか自分もこういうふうに女性と接せるようになりたい」と本気で憧れていた。

3年浪人の末に公務員試験に受かった28歳の春、俺は人生で初めて「この人と結婚したい」と本気で思える人に出会った。マッチングアプリで知り合って、付き合えた。「ついに自分にもこの感覚が分かった」――勝者の気分だった。

そして、たった半年ちょっとで、その人から別れを切り出されて、振られた。

振った彼女が悪いんじゃない。当時の俺が、彼女のことを「人」ではなく「落とす対象」として見ていたから、だった。これは、振られて当然だった俺の話と、振ってくれた彼女への感謝の話だ。

「人生勝った」と思っていた春

桜の花びらが舗装路に散る・春の柔らかい光

合格通知が出てから、新人研修が始まるまでの数ヶ月、俺は人生最高のステージにいた。派遣の工場での検品作業も区切りをつけて辞めた。4月からの仕事は決まっている。ただただ、ゆっくり過ごせる、人生最後の春休みみたいな時間だった。

余裕があったんだと思う。そういう余裕がある時って、なぜか色んなものがうまく回り始める。マッチングアプリで、本当に可愛いなと思える人に出会えた。付き合うことができた。人生で初めて、「この人と結婚したらいいな」と思える人に出会えた。

俺はその時、本気で「全部つかみ取った」と思った。3年浪人の苦しみも、寿司屋を1年で逃げ出した挫折も、派遣の日々も、全部このための準備期間だったんだと、本気で思った。

彼女を「落とす対象」として見ていた俺

暗闇に浮かぶスマホを持つ手・抽象的

──ただ、ね。ここから先は、書くのが正直、恥ずかしい。でも書く。書かないと、この記事は嘘になるから。

大学時代、俺は情報商材で100万円以上溶かした。その中には、恋愛系の情報商材も含まれていた。恋愛経験がほぼゼロだった当時の俺にとって、それは目から鱗の内容だった。「こうやって会話を組み立てる」「こういう時はあえてLINEを返さない」「こうやって自分の価値を高く見せる」――そういう、いわゆる恋愛テクニックが、これでもかってくらい詰まっていた。

そして、その情報商材の中で当たり前のように使われていた言葉が、こういうものだった。

「落とす」「やれる」「はめる」「100人切り」「掌握する」

当時の俺は、これに何の違和感も持っていなかった。むしろ、「いつか自分もこういうふうに女性と接せるようになりたい」と、本気で憧れていた。マッチングアプリで出会った彼女と付き合えた時、俺の中にあったのは「ついに自分にもこの感覚が分かった」という、勝者の気分だった。

彼女と付き合えた、じゃない。彼女を落とせた、だった。今これを書きながら、自分で自分が嫌になる。でも、当時の俺は本気でそう思っていた。

「素のお前と話したい」――彼女のサインに気づけなかった

付き合いたての最初の1〜2ヶ月、俺はテクニック通りに動いていた。会話の組み立て方も、デートの誘い方も、LINEの返し方も、全部、情報商材で読んだ「正解」をなぞっていた。彼女は、それに合わせてくれた。笑顔で。優しい人だった。たぶん、付き合いたての頃って、お互い自分のいいところを見せようとして、嫌なところは飲み込むものなんだと思う。

でも、3ヶ月、4ヶ月と経つと、化けの皮は剥がれてくる。俺の素は、頑固で、相手の気持ちに寄り添うのが下手で、自分の都合を優先しがちな男だった。それはテクニックでは隠しきれなかった。そして俺は、彼女が見せてくれていたサインに、気づけなかった。

今思うと、彼女は何度も俺に「素のお前と話したい」と言っていたんだと思う。でも、テクニックの上に立っていた俺は、「素」を見せる勇気がなくて、ずっと取り繕い続けていた。そして、彼女のほうが先に、限界を迎えた。

振られた日、俺は何が起きたか分からなかった

雨の窓・夜のボケライト

付き合って7〜8ヶ月くらい経った頃、向こうから別れを切り出された。その時、俺はびっくりした。「え、なんで?」と本気で思った。だって、テクニック通りにやってたから。情報商材の正解をなぞってたから。何が悪かったのか、当時の俺には分からなかった。

だから、最後の方は、俺もちょっと荒れてしまった。彼女を傷つけるような言葉も、いくつか言ったと思う。それは、今でも申し訳ないと思っている。振られて、しばらく落ち込んだ。研修期間中、しばらくそのことを考え続けていた。

でも──ね。時間が経って、ようやく見えてきた。彼女は何も悪くなかった。ただ、俺が「素」を見せる勇気を持てなかっただけだった。

「落とす」と思った瞬間、関係はもう歪んでいた

今、これを書きながら、当時の俺の言葉遣いを思い出すと、本当に恥ずかしい。「落とす」「やれる」「はめる」「掌握する」――こういう言葉を、当時の俺は何の違和感もなく使っていた。女性のことを、対等な人間として見ていなかった。情報商材に書いてあった「攻略対象」みたいなニュアンスで、自分でも染まっていた。

もちろん、男と女は身体的な強さの差はある。でも、人間関係としては対等だ。彼氏彼女として並んで歩く相手を、「落とす」「掌握する」なんて言葉で語る時点で、もう関係が歪んでいる。当時の俺は、それが分かっていなかった。

振られて、しばらくして、ようやく分かった。「落とす」と思った瞬間、その関係はもう、健全じゃなくなっていた。

振ってくれた彼女に、いま、感謝している

ブラインド越しの暖色光・静寂

振られた直後は、悔しさと寂しさで頭がぐちゃぐちゃだった。でも、何年も経った今、はっきり言える。

あの時、彼女が俺を振ってくれて、本当に良かった。

もし、あのままズルズル続いていたら、俺は「素」を見せる勇気を持たないまま、テクニックの上に立った関係を続けてしまっていた。そして、もしそのまま結婚していたら、彼女はもっと長い時間、本当の俺と向き合えないまま、消耗していたと思う。

彼女は、自分の感覚に正直になって、勇気を出して、俺との関係を終わらせてくれた。それは、彼女にとっても辛い選択だったはずだ。そして、結果的に、俺にとっても救いだった。

──情報商材の恋愛テクニックは、まったくの無駄だったわけじゃない。それがなかったら、たぶん俺は彼女に出会うことすらできなかった。あの本に書いてあった「最初の声のかけ方」がなければ、マッチングアプリのメッセージで止まっていた。でも、それは「入口」までだ。入口の先、本当の関係を続けるためには、テクニックじゃなくて、素の自分を見せる勇気がいる。俺はそれを、彼女に教えてもらった。

同じように「素を見せられない」あなたへ

これを読んでくれている人の中に、もしかしたら、今、似たような状況にいる人がいるかもしれない。恋愛テクニックの本を読んで、その通りにやってみて、それなりに付き合えて。でも、なんか自分の本当の気持ちは隠していて。相手の優しさに甘えて、ずっと取り繕っていて。「いつバレるんだろう」って、心のどこかでビクビクしている。

俺もそうだった。

でも、たぶん大丈夫だ。化けの皮は、いつか剥がれる。そして、剥がれた時に、その関係が壊れるなら、それは「素のお前と相性が合わない人だった」というだけのことだ。剥がれた時に、それでも一緒にいてくれる人が、本当のパートナーだ。

俺は、その後、今の妻と出会って、結婚して、娘もいる。妻には、最初から「素」を見せたわけじゃない。やっぱり最初は取り繕った。でも、剥がれても妻は離れなかった。だから今、家族でいる。

「落とす」じゃない。「掌握する」でもない。ただ、一緒に並んで歩ける相手を見つけること。その相手に、自分の弱さを見せられる勇気を持つこと。たぶん、これが世間で言う恋愛の正解とは限らないけど、少なくとも俺の正解だ。

当時の元カノには、もう連絡を取ることはない。でも、もしどこかで、彼女が幸せに過ごしてくれていたら、それで十分だ。

もし、いまあなたが「素を見せる勇気がない」まま誰かと付き合っているなら――いったん、一呼吸おいてみてほしい。

テクニックの上に乗った関係は、いつか必ず壊れる。早く壊れるほど、お互いのためだ。化けの皮が剥がれても、それでも一緒にいてくれる人。その人を、ちゃんと探そう。

あの時、振ってくれてありがとう。おかげで、俺は俺の正解に辿り着けた。

あなたも、必ず辿り着ける。俺と一緒に、前を向こう。

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